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低層マンションの外部環境デザインとホールデザインのサポート。

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■概要

高層マンションは、建築本体のボリュームがありその存在感が非常に大きいため周辺環境を巻き込んだアーバンスケールの視点で環境づくりをする必要がある。特に、建物周辺に植える植物は建築の存在感に負けないよう可能な限りより大きな緑を植栽することが求められるケースが多く、それゆえに緑が遠くの存在に感じてしまいがちになる。一方、今回の計画地は低層マンションで、高層と比較すると全てにおいてスケールダウンするため良い意味でヒューマンスケールな空間であるといえる。ヒューマンスケールの空間を作るということは、住まい手の感覚として五感に通ずる感覚が必要になる。マンションの外部環境を単純に緑豊かな空間にするだけでは、ヒューマンスケールは作れない。五感で感じられる考えられた環境づくりが必要である。限られた敷地の中に建物と緑地を設け、その緑地には駅に向かう人が気持よいと思える風景を作ることで、既存の街並みと調和・連携が生まれるプロジェクトを目指し、このプロジェクトを通して美しい風景や街並みを作り、そして住まい手によって育んで行くことで「美しく住まう。風景に価値を感じる街」ということが周辺に広がり、優れた街並みを作るフラッグシップモデルとしたいと考えています。

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■コンセプト
外部環境は、ヒューマンスケールをキーワードに、【五感で味わう環境】がそこにあるをコンセプトにしています。

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■ストーリー
3層の低層マンション、限られた住まい手だけの空間、五感で味わう環境が1つの完結した街と捉える。
この街には、五感で味わう環境があり、それらは緑で構成されている。ファサードには、野山のような雑木が趣があり、低層マンションの足元を緑で覆い尽くしている。住まい手を迎え入れるエントランスには、その野山の雑木を切り取った植え込みが鎮座している。この街(マンション)の木々は、思わず触ったり、部屋から眺めたり、木々の果実を食したり、風を切る音を聞き天気を知ったり、風によって運ばれる香りで季節の到来を感じたりと住まいの中にある季節感をシンプルに表現している。

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■ファサード
端正な建築フォルムに合わせて、シンボルツリーをアオダモ(H=4.0、落葉、株立)とした。アオダモは、樹形が美しく非常に希少性がある雑木植栽です。ファサードの足元を構成する植栽は、様々な雑木植栽で構成されており、モミジ類(ヤマモミジ、コハウチワカエデ)や香り豊かな木々(ロウバイ、カラタネオガタマ)を中心とした優しい株立の植栽が群をなし「野山」のような趣を湛えています。窓を開放すれば、自然な風景と火山岩の苔生した景観とともに緑の香りが部屋を抜け、上品な空間と快適性を取り入れることが出来ます。
特に、季節の香り(ロウバイ(2~3月)→ジンチョウゲ(3~4月)→カラタネオガタマ(5~6月)→クチナシ(6~7月)→キンモクセイ(9~10月)など季節に合わせた香りが特徴で、香りの記憶は視覚や触覚の記憶よりも、より感情をともなう記憶、当時のドキドキやワクワクなどまで思い出すことが多く、故郷や原風景としての香りの記憶として深く住み手の心に沁みわたるようデザインされている。

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■エントランスホール
エントランスホールの植栽は、住まい手にとっては、毎日通るエントランスであり、お客様にとっては住み手のアイデンティティを知ることとなる為、ファサードの植栽群を切り取ったような小さな森を形成し、一つの群となる雑木植栽群になっています。メインツリーは、ソヨゴ(H=4.0m、常緑、株立)とヤマモミジ(H=3.5m、落葉、株立)を対に植栽し、それらを引き立てるサブツリーとして、ハイノキ、クマシデなどの小型雑木植栽をセレクトしています。足元にはベニシダ、フッキソウ、フイリフッキソウなどが季節の彩りを添えてくれ、このエントランスホールに情緒感ある繊細な季節感を創り出すことを目指しています。

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■アプローチ
五感を味わう環境として、1階に住む人だけが味わえる見る、香る、触る、食べる、聞くをすべて備わった特別な空間。単なる植栽群では無く、そのに植えられている木々すべてに五感で味わう環境というコンセプトが表現されている。有機的な樹種を積極的に植えるが省スペースであるため歩行空間を十分に確保できるように樹形は直立を保ち、葉張が広がらない樹種とする。また、北側に位置するため地温が低い箇所を好み、且つ耐陰性の高いシャラ、ヒメシャラ、アオダモ、クロモジ、ハイノキ、クマシデを効果的に植栽する。
アクセントとしてのモミジ類や香りのジンチョウゲ、キンモクセイなど様々な五感を刺激する仕掛けがある。

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■意匠ウォール
ファサードの意匠ウォールは杉板の不規則な断面模様を模ったもので、雑木植栽と相まって目で見ても楽しく、そして良く観察すると一枚一枚すべて違う模様が、均一性のあるマンションの中で一つ不均一という曖昧性が住み手のアイデンティテーを表現しているものと言える。夜間はライティング照明によって、その不均一性のある凹凸感が浮き上がり、ウォール自体が間接照明の役割と果たし、防犯面にも配慮している。建物の一部にもこの意匠を取り入れ、ぬくもりある木調を取り入れつつ、自然石との調和を図り、安定感のある空間になっている。

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結局のところ、まったく同じ植物を使ってもデザイナーや植える人の手によって大きく異なる。そこにはコンセプトや明快な考えが無いことが大きな理由で、例えコンセプトを設定していても作り手にまで浸透していなかったり、そのコンセプト自体に意味を感じられないと結局は、なんとなくな・・・模倣になるだけで、全くそういうプロジェクトはオモテ面だけを作り込んだ、深みが無い面白みに欠けるプロジェクトになってしまう。

 

<今日の音楽>

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